
Luke GromenとLouis Vincent Gaveが語る2025年の転換点
2025年4月、トランプ政権による大規模な関税政策の発表は、単なる貿易戦争の再燃ではなく、戦後80年間続いた米ドル基軸通貨体制の根本的な変革の始まりを告げる歴史的転換点となった可能性が高い。
著名なマクロアナリストであるLuke Gromen氏とLouis Vincent Gave氏が、この歴史的瞬間について語った対話は、今後の世界経済と投資戦略を考える上で極めて重要な示唆に富んでいる。
ドル基軸通貨体制の構造的変化
外貨準備における米ドルの地位低下
Luke Gromen氏は、米ドルの基軸通貨としての地位について興味深い分析を提示している。
「取引における使用率では依然として米ドルが90%を占めているが、各国の外貨準備に占める米ドルの比率は過去15年間で70%から50%台前半まで低下している。金を市場価格で計算に含めると、米ドルの比率は50%を下回る」
この変化は表面的な数字以上に重要な意味を持つ。従来、余剰ドルを持つ国々は米国債を購入するのが常識だった。しかし過去4-5年間、この流れに根本的な変化が生じている。
米国債からテック株への資金移動、そしてその限界
Louis Vincent Gave氏は、この構造変化をより具体的に説明している。
「過去4年間連続で米国債が下落している中、余剰ドルを持つ国々は米国債を避け、代わりにMag7(巨大テック株)に投資するようになった。しかし今度は、そのMag7にも問題が生じている」
AI投資の巨額な先行投資、新たな税制負担、そして評価水準の過度な上昇により、Mag7も安全な「ドル資産」とは言えなくなってきている。
金が担う新たな役割 - 「金が赤字を担う」とは
1970年代の教訓と現代への応用
Luke Gromen氏が提唱する「金が赤字を担う」という概念は、1970年代の機密解除された国務省文書に基づいている。
当時、石油危機後のアラブ諸国の余剰資金処理について、キッシンジャー国務長官らが議論した際、「彼らに金を買わせ、市場価格で取引させることで、資金を金市場に還流させる」という提案がなされていた。
この戦略の狙いは:
- 各国が自国に金を保管することで完全な国家統制を実現
- インフレ調整機能を持つ資産への投資
- 西側産業への過度な外国資本流入を防ぐ
現在のトランプ政権の政策は、図らずもこの1970年代の戦略を再現している可能性が高い。
中国の制裁から得た教訓
Louis Vincent Gave氏は、ロシア制裁が各国に与えた教訓について重要な指摘をしている。
「ロシアが米ドル、ユーロ、スイスフランから締め出された後、中国との貿易が急増した。そしてその多くが金で決済されている。各国は、金さえあれば国境を越えて貿易決済が可能で、大きな富を効率的に移動できることを再認識した」
米中経済戦争の新段階 - 債務問題が決定的弱点に
米国の構造的脆弱性
Luke Gromen氏は、今回の貿易戦争が前回と根本的に異なる点を指摘している。
「米国の債務対GDP比は120%に達し、利払い費に社会保障費、退役軍人費を加えた『利払い類似支出』は、史上最高の税収に対して108%という異常な水準にある」
この状況下で関税による景気減速が税収減少を招けば、債務問題は雪だるま式に悪化する。
企業債務の時限爆弾
Louis Vincent Gave氏は、さらに深刻な問題として企業債務問題を指摘している。
「2020年後半から2021年前半にかけて、米企業は記録的な社債発行を行った。その多くが5年債で、2025年後半から2026年前半に大量の借り換えが必要になる。当時の金利1%が現在は6%だ」
この借り換え負担は、企業業績と経済全体に深刻な影響を与える可能性が高い。
中国の戦略的優位性
両アナリストは、中国の準備期間と忍耐力について重要な分析を提供している。
Louis Vincent Gave氏:「中国は2018年のハイテク制裁を『経済戦争の開戦』と捉え、8年間準備してきた。習近平氏のような文化大革命を生き抜いた世代は、想像を絶する困難に耐える能力を持っている」
Luke Gromen氏:「中国は『敵が間違いを犯している時は邪魔をするな』というナポレオンの格言を実践するだろう。人民元切り下げは米国を助けることになるため、おそらく実行しない」
2030年から振り返って - 何を買うべきだったか
推奨投資戦略
Luke Gromen氏の推奨:
- 金とビットコイン(基軸資産として)
- 米国の電力インフラ関連(国内回帰に伴う大規模投資)
- 高品質な農業用不動産
Louis Vincent Gave氏の推奨:
- エマージング市場株式(特に金融セクター)
- コモディティ全般
- 米ドル安で恩恵を受けるあらゆる資産クラス
日本の投資家への示唆
この分析から、日本の投資家が考慮すべき点:
- 通貨分散の重要性: 米ドル一極集中のリスク
- 実物資産への配分: 金、農地、インフラ関連
- 地政学リスクへの備え: 複数地域への分散投資
- 長期視点の重要性: 短期的な変動に惑わされない戦略
アメリカ帝国の終焉と新たな世界秩序
Louis Vincent Gave氏は、トランプ政権の政策を「アメリカ帝国の終焉」の宣言と解釈している。
「トランプは『西半球要塞アメリカ』の構築を目指している。ヨーロッパもアジアも、それぞれ自分たちでやってくれ、というメッセージだ」
この背景には、エリック・プリンス氏(ブラックウォーター創設者)がヒルズデール大学で行った演説の影響があるとされる。その要旨は「米国の兵器優位性は終わった」という衝撃的な内容だった。
まとめ - 歴史的転換点への対応
2025年4月の出来事は、1971年8月15日のニクソン・ショックに匹敵する歴史的転換点となる可能性が高い。当時、金兌換停止により戦後のブレトン・ウッズ体制が終焉を迎えたように、今回の関税戦争は米ドル基軸通貨体制の終わりの始まりを告げているかもしれない。
重要なのは、この変化を単なる一時的な市場混乱として片付けるのではなく、世界経済システムの根本的な変革として理解することだ。
投資家にとって必要なのは:
- パラダイムシフトの認識: 従来の常識が通用しない新時代への適応
- 多様化戦略: 単一通貨、単一地域への依存からの脱却
- 実物資産重視: 金融資産だけでなく、実物価値を持つ資産への配分
- 長期的視点: 短期的な混乱に惑わされない投資哲学の確立
歴史の教訓が示すように、このような大転換期には大きなリスクと同時に、それ以上に大きな機会が生まれる。重要なのは、変化の本質を正しく理解し、適切に対応することである。
この記事は、In Gold We Trust YouTubeに掲載のインタビューに基づいています。Luke Gromen氏のFFT-LCとLouis Vincent Gave氏のGaveKalは、いずれも世界的に評価の高いマクロ経済分析を提供しています。